キリムの柄

1.キリムはなぜ幾何学文様なのですか?
キリムの織り手である遊牧民の多くがイスラム教徒です。
偶像崇拝を禁止しているイスラム教では、花や鳥、人物などの具象柄は使えません。そのため、柄を表現したいときは、幾何学文様になります。
2.キリムは型紙のない織物と聞きましたが? 
昔から、キリムは、織り手の日々の感情表現と言われてきました。
昔の織り手は5歳位から、織りをする母や祖母のそばで、その手に、その感覚に、織りのすべてを刷り込んでいきました。現在の織り手は、デザインのモチーフや小さな部分柄を伝えられますが、創造力を馳駆ししながら、先祖と同じスタイルで織りをしています。
3.幾何学文様それぞれに意味があるのですか? 
あります。キリムの織り手は女性達です。彼女らは、目に映る物のみならず、自然現象や感情までも、キリムの中に織り込みました。デザインの意味はどれも「幸せ」へつながります。
4.なぜ、「幸せ」ですか?
それは、キリムが遊牧民のテントの中で使った家具であり、娘の嫁入りの際の持参品だったからです。また、モスクへ寄進するための織物でもあるからです。
5.どのような柄ですか?
イスラム教が偶像崇拝を禁じているため、キリムの柄は幾何学文様が用いられ、そこには織り手の女性達の夢、願い、喜びなど様々な思いが表現されています。
主な文様をご紹介いたします。
ベレケット:豊穣

beleket

鳥:幸せや喜び、良い知らせの予感

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足かせ:幸せな家族関係、友愛

asikase

ユニゾン:愛と調和

yunizon

ジャー:子孫繁栄

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バードック(ごぼう):裕福

berdok

櫛:命の誕生、幸せな結婚を守る

kusi te

エヴィルアイ(眼):邪視除け

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クロス:他からのねたみ、嫉みを四方に分け弱める

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フック(鍵):邪視除け

fuk

生命の樹:不滅の繁栄、永遠の命

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花(種):子孫繁栄

flower

チェスト(箱):娘の嫁入り道具を表す。子孫繁栄

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ドラゴン:水と空気の支配者で、豊作や豊かさをもたらす

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エリベリンデ(腰に手を置く女性):豊かな子宮を意味し、豊作、多産、繁栄の意味

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水の流れ:生命を支える水が、常に身近にありますようにとの願い

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狼の口:邪視除け

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羊の角:繁栄、豊穣,力強さ、たくましさ

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髪飾り、耳飾り(イヤリング):結婚願望

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星:幸せへの願い

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眼:邪視除け

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6.トルコのキリムの柄は、他地域よりも多彩に思えますが?
トルコは、他に類を見ないほどたくさんの異民族と出会い、深く混じり合い、色々な文化の影響を受けながら、否定することなくそれらを自分の文化に取り入れてきたからと考えられます。
7.トルコキリムと言われる物の中に、花柄を見かけますが?
隆盛を極めたオスマン・トルコの時代、北アフリカ、カフカス地域やイラン、イラクに至るまで、トルコ領となった時があります。
イスラムではないこれらの地域に伝え継がれたキリムの柄を否定することなく尊重してきたお陰で、トルコキリムはバリエーションに富んだ柄を持っています。
8.どのようなキリムですか?
ロシア、カラバ地方に伝わるキリムは、細く強く撚られたコットンの縦糸に、ウールを横糸に使った、濃紺と濃赤の花柄キリムです。現代では、とても織れない工芸品として、コレクターのキリムとして知られる貴重品です。
9.他にもありますか?
トルコ領、ロシア領、そして現在ではモルドバ共和国に属しているベッサラビア(Bessarabia)には、豊かな色調の花柄や風景のキリムが伝えられています。丸く愛らしい柄や、職人の精緻な技を伝えるキリムは、つづれ織りと呼びたいほどです。

  

 

10.これらの伝統柄も、現在織り継がれていますか?
問屋さんの努力により、現在では輸出用キリムの一つのデザインとして、織られています。
織りも染めも、もはや先祖には敵いませんが、現在出来る精一杯の仕事をしています。

  
現在のキリム                         アンティークキリム

 

11.最もポピュラーな、柄は何ですか?
ミフラーブ文様だと思います。ミフラーブとは、モスクの奥の正面のアーチ型をした窪み(ニッチ、碧眼)で、お祈りの方向を示しています。
12.ミフラブ文様でランプ文様を見かけた事がありますが?
ミフラブ文様でランプはポピュラーな文様です。
真の信仰者の心を表現していると言われるデザインです。
この見事なキリムは、東トルコ、エルズルムです。樹木、果実、花などで埋め尽くされた、糸、染、織の三拍子が揃ったキリムは、現在ではコレクターの収集品です。
13.「天国の門」と呼ばれるデザインはどれですか?
コンヤ、カラプナールに伝わるキリムは、ギザギザの櫛型が文様を構成しており、サーフ・デザインと呼ばれています。
モスクの回廊をイメージしているようなキリムで、天国の入口の門とも言われています。
14.コンヤ地方のオブルク・キリムも有名ですね? 
コンヤ、オブルク・キリムは、中央にアーチを置き、両横に三本の樹の文様が織り込まれた、上質のキリムです。この地域でも、もはや伝統柄キリムの織りは終息し手織り、今では貴重品となっています。樹は、不滅の繁栄、子孫繁栄を意味します。
15.デザインを見ていると「魔除け」が多いですね?
イスタンブールに行くと、どこにでもあるのが青いガラスの目玉です。
これはナザルルク、邪視除けの目です。
人々は、昔から多くの災害や禍に見舞われてきました。これらは、何か目に見えない力が引き起こすと考えました。人々が最も恐れたのが、邪視の持つ呪力です。その邪悪を見返すおまじないが魔除けの目です。
キリムにはとてもポピュラーなデザインで、沢山の魔除け、邪視除けがあります。身の回りに置く事により、身を守るという意味です。

  
ナザルルク

 

 


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