キリムNo.: KJ31560
産地: コンヤ、草木染め、新作キリム
寸法: 223x176cm
価格: 352,000円
出合って10年ほどが経過したキリムは、そろそろ草木染め特有の褪色が始まります。
織られて30年ほどの時間の経過は、キリムの色調を少しずつ落ち着かせ、目にする者に心地よさを感じさせます。贅沢な草木染めは、光に反応し、その色の深さと美しさを増していきます。
「バンカシー(銀行家)」と呼ばれた問屋さんの自慢は、織り手たちの技術でした。織り手たちのお陰でたくさんのキリムを売り、バンカシーのニックネームをもらったほどです。
色調に重点を置いて染められた色は透明感があり、見ているだけで気持ち良くなります。キリムを織る熟練した織り手たちは、横糸を斜めに入れ、糸と色で立体感のある織物を仕上げました。色調の美しさを色の濃淡で表現できる織り手のお陰で、世界の経済が良かった当時、このシリーズは売れました。
上質のウールを強く太く手で紡ぎ、植物でその糸を染めます。上等のウールだからこそ、熱湯の中で何回も繰り返しながら色を濃くして行く作業に耐えられるのです。
手間がかかっているせいで、同じサイズの他産地のキリムの2倍も3倍もするキリムですが、その耐久性や雰囲気は、50年後、100年後を想像しながら使えるキリムでした。
しかし、時代の変化はコンヤキリムにも及び、様々な工夫を重ねながらもどうしても安価な価格は付けられませんでした。
雑巾を縫うように、ひたすら針を上下、上下と繰り返していく運針(うんしん)と呼ばれる織り方は、この織り手たちの部族に伝え継がれてきた技法です。いつ終わるかわからない作業に向かう織り手に必要なのは、根気と忍耐と磨かれた美的センスです。キリムを織る技術の伝承は難しく、技術はその織り手だけのものです。
当時でも、織り手の多くは、小さいときからキリムを織り続けた年配の熟練者たちでした。
問屋さんが心配した通り、誰もが認めるすごい仕事の贅沢キリムは、織り手の退職と、経済の変化により消えてしまいました。
この問屋さんは、それ以降、古い伝統的キリムのコレクターとしてたくさんの良質キリムを集め供給し続けてくれています。私たちが贈ったアダナは「プロフェッサー」です。