KJ11172、240x170cm、東トルコ、ハッカリ、ベイリーオールドキリム

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キリムNo.: KJ11172

産地: 東トルコ、ハッカリ、ベイリーオールドキリム

寸法: 240x170cm


1993年、まるで星空か?花園か?そのキリムの出来栄えに目を丸くしている私達に、「東トルコはクルド族の地域だ。遊牧生活が長かったクルド族は、各々の部族がそれぞれのキリムを伝え継いでいる。ハッカリのキリムの織りの細かさはクルド随一だ。ハッカリキリムと言えば細かさの代名詞、細かさを追求するだけあって、染めも糸も上等だよ。」と、先祖を自慢げに話す問屋さんでした。

伝統的な遊牧民のキリムは、この様に2枚に剥がれています。
最初の年、次の年と時間をかけ織った2枚を剥ぎ合わせ、大きなキリムに仕上げます。柄は基本的に左右対称ですが、どんなに上手な織り手でも、左右をきっちり合わせる事に特別なこだわりはないようです。織り手の関心は、糸を強く丈夫に撚ること、そしてその糸を深く透明度の高い糸に染める事に尽きるようです。

織り手は藍色に赤色を多く加え、紺色に近い濃い青を手にしました。真黒な夜空に浮かぶ満天の星空が彼らの憧れる楽園に重なります。赤色も赤が強調された茜色、臙脂(えんじ)色から濃く暗いワインレッドまで、色の配合を変えながら見せている微妙な色の違いが、織り手の染色技術の高さを教えてくれます。

このキリムは、部族長のような実力者の娘の嫁入りの持参品です。銀糸が小柄で描かれている「眼」の中心や上下に大事そうに織り込まれています。
結婚相手が決まった娘は、相手と固く結ばれます様にとの願いを込め、自分で結びを織り込みます。通常、使われるのは織られたキリムのウールの色糸や綿糸です。が、実力者クラスは、家の権威や力を象徴するかのように金糸や銀糸を織り込みました。

遊牧生活にとり不可欠な持参品キリムは、娘の実家の財力、センスや目配りの確かさなどを推し量る調度品でした。当初はテントの中の素朴で実用的な民芸品だったキリムですが、織りや染めの技術の向上、模様の多彩さや色調の豊かさ、織り手の実用的な計算などから、テントを飾る装飾品から工芸品へと、その価値を高めて行きました。

上等のキリムを持参品に嫁ぐ娘は、その家に幸運をもたらすと言う言い伝え通り、嫁ぎ先で大事にされたそうです。ハレの日、キリムがテントの中央に広げられるたび、娘は鼻高々に実家の家族に思いを馳せたことでしょう。




エス(S)字フック=邪視除け、 眼=邪視除け、 星=幸せへの願い、 


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