KJ15484、145x139cm、イラン、バルーチ族、アンティークキリム

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キリムNo.: KJ15484

産地: イラン、バルーチ族、アンティークキリム

寸法: 145x139cm


アフガニスタン、パキスタン、イラン国境をまたぐように移動を続けたバルーチ族は、それぞれの地域で特徴あるキリムを織り継いできました。落ち着いた重厚な藍、茜、茶の色調はどの地域でも共通しています。時間も手間もいとわない精緻な仕事は、どの地域であれ、キリムの最高峰として高い評価を受けてきました。

これは、イラン北東部のバルーチ族のソフラと呼ばれる織物です。濃い色調の組み合わせは、いかにもバルーチの特上と言った雰囲気を伝えています。ソフラは、食卓用のキリムで、食事時、テントの中の床に敷かれ料理が置かれます。ソフラのまわりを車座に囲み食事が始まります。この様に正方形に近いものはフラワー(小麦粉)ソフラとも呼ばれました。この上にお盆を置き、小麦粉を練ったり、焼き上がったパンを包んで保管したりなどの幅広い用途に使われました。

気持ちをギュッと掴まれたキリムは、想像力をどこまでも広げてくれるアートです。何度も水が通ったソフラは、すっかり無駄毛が取れてとてもしなやかです。
縦糸には現在ではつやつや光るヤギの毛が使われています。直毛のヤギの毛は、相当熟練した織り手のみが扱える毛です。カーリーな羊の毛と違い、強く固く織った糸でも、長年の使用の間に山羊の毛の撚りは戻ってしまいます。撚られた当時のままの織り手の技術には、「お見事です」の言葉しかありません。

問屋さんは、「砂漠の乾燥した空気は目を傷めるくらいまぶしいよ。だからバルーチの色調は暗くて重いんだ、彼らの目を休め、気持ちを落ち着かせる色なんだ。」と言いました。
彼らが移動した山岳地帯での植物の入手はとても困難でした。それがバルーチの色と言われる重く濃い藍、濃紺、こげ茶、茜、臙脂(えんじ)、黒などの色につながっていきました。

高度な技術は、横糸を縦糸が見えなくなるまでビッシリ詰めて織るキリム(つづれ)織り、
裏に糸を渡す錦織り、色糸を使い刺繍をするように糸をかけていく縫い取り織りなどの様々な技法を使っています。

繊細な表現ながらも厳しい生活が感じられるソフラですが、ボーダーを囲む濃い色に合わせた白い糸が、なぜか柔らかい気持ちにさせてくれます。そこには厳しい生活環境だけでなく、その厳しさを受け入れるしなやかさと強さを持った織り手が感じられるからです。
織り手が織り上げたのは、「一日?」「一年?」「目の前の世界?」「心模様?」、限られた色で見事に表現された織り手のアートな世界は、私たちの想像をかきたてます。




眼=邪視除け、水の流れ=生命を支える水が、常に身近にありますようにとの願い

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