キリムNo.: KJ2380
産地: カイセリ, オールドキリム
寸法: 249x79cm
価格: 198,000円
1990年、メリハリあるエスニック調のキリムが人気だった頃、目に止まったのが、問屋さんの店の隅に、天井まで届くほど積まれた大きなキリム群でした。
その大きさを知りたくて広げてもらったのが、このキリムです。広げると、柔らかいピンク系の、ボンヤリした雰囲気の大きなメダリオン柄です。その大きさたるや、長さ4mx幅2mです。直径4~5mのテントの中心に敷かれ、接待などの際に使ったと言う事です。
見慣れてくると、ボンヤリしたピンク系の中に、ベージュやグレー、浅い緑や
オレンジなどが、あちらこちらにちりばめて使われており、織り手の力量と気遣いが伝わってくるものでした。癒し系のやさしい色調は、そこにいるだけでホットさせてくれるお母さんの大きな深い懐のようで、捨てがたいものがあり、手に入れました。
二十数年が経っても、大きさ故に出合いがなく、とうとう手を加えることを決めました。
使いやすいサイズのランナーと沢山のクッションを作りました。パステルキリムの上にクッションを並べて置くだけで、空間が一気にゴージャスに変わります。
織り手もこの大変身を喜んでいるはずです。
織り手は、赤と黄色の混ぜ加減を工夫しながら、撫子(なでしこ)色のように、ピンクを含んだ赤色を染め出しています。どこまでも優しい色出しは、織り手の性格のようです。長い間、光にかわいがってもらったキリムは、織り手が想像した以上に、柔らかなパステルカラーに褪色し、珍しい色調のキリムになりました。
カイセリには、横糸を柔らかく撚る習慣があります。柔らかく撚られた横糸は、毛布のように柔らかな肌触りがあり好まれます。柔らかい横糸に対し、縦糸は強く固くしっかりした糸が使われています。この様な工夫がカイセリキリムの人気を高めてきました。
残念ながら、現在のキリムは価格競争のせいもあり、縦糸も横糸も撚りが甘くなっています。肌触りは良くても、甘い撚りの糸は、痛みが早く来ます。現在のマーケットで人気のあるカイセリですが、その寿命は10~15年ほどです。
キリムを伝統と捉えた時代と、商品と捉える時代の違いが、その強さの差となってきました。
眼=邪視除け、 ベレケット=豊穣、 羊の角=繁栄