キリムNo.: KJ26333
産地: トルコ、シバス/マラティアアンティークジジム(ウール/ウール)
寸法: 89x72cm
価格: 154,000円
細かい織りの上等なキリムは、チュアル(衣類袋)の表側でした。控えめな柄と褪色して落ち着いた色調が目を惹くキリムは、丁寧な仕事と織り込まれた金属糸が、部族にとり大事な織物であったことを語っています。
縦糸は上等の2本のウールを撚り合わせた双糸(そうし)です。
現在手に出来る100年以上前のキリムの多くに双糸が使われています。人目に触れない縦糸ですが、部族のキリムを織る織り手の誇りと気迫が感じられる糸です。
2本の縦糸を一本に撚り織られたキリムは、普通、一本糸より厚いキリムになります。しかし、2本糸を固く強く細く撚れる熟練した織り手は、一本糸と変わらない繊細でしなやかな表情のキリムを織っています。
現代よりはるかに健康だった自然が育てた羊の毛は、繊維が長くしなやかで扱いやすく、熟練した織り手の意のままに、どのような糸にもなったのです。
織り手が織ったのは、孫娘の嫁入りの持参品チュアルです。
部族長あるいは身分の高い一族は、ジジム織り部分に金や銀の金属糸を使っています。織り手のしなやかな織りは、ウール糸と金属糸を滑らかに自然になじませています。
娘の持参品キリムには、嫁ぐ娘が幸せな結婚を願いながら「幸せの結び」を結んでいく習慣がありました。一般家庭では綿糸や織っているキリムのウール糸が使われました。豊かな家庭では絹糸です。そして、部族長クラスでは、金糸や銀糸を織り込みました。娘の実家の経済力をあらわしていた「幸せの結び」です。
100年の時間と光がキリムの色調を褪色させ、柔らかくなった現在の表情ですが、本来は深い紫色です。赤と青の配合から生まれる紫色を、魔法の手を持った織り手は配合で微妙に違う紫色にしています。茜で染められた赤色、茜に藍の混合から生まれた紫色、そして藍を使った青色などの深い色からも、織り手の技量の高さが伝わります。
マラティアのパステル調の明るい色彩が生まれる以前のキリムは、しっかり大地に根差した表情でありながら、品があります。
100年前のキリムとそれ以降のキリムには、歴然とした差が見られます。
大事に使い継がれたキリムですが、その時、その時、織り手達が修理糸をいれています。うまい人、頑張る人、不器用な人、沢山の織り手達の努力が愛らしいキリムでもあります。
水の流れ=生命を支える水が、常に身近にありますようにとの願い、 エリデリンベ(に手を置く女性)=繁栄、多産、豊穣、ベレケット=豊穣