キリムNo.: KJ30735
産地: コンヤ、トルクメン族、アンティークキリム(コットン/ウール)
寸法: 229x55cm
価格: 286,000円
紫みのピンクを含んだ膨らみのある独特の赤色が褪色して、日本で言えば「今様(いまよう)色」になりました。大人の雰囲気を持った不思議なピンク系の赤色が光の加減により見せる色の表情に、思わず目が止まります。
青色は万国共通、大昔から人類になじみ深い色です。トルコでは、15世紀頃からインドよりインディゴを輸入しています。イスタンブール、当時のコンスタンチノープルが集散地として、トルコ各地に藍が渡って行きました。
この透明感のある明るさを感じさせる青は、日本では花田色(はなだいろ)と呼ばれる、藍の染料だけで染められる純粋な藍染めの青とされています。階級ごとに衣服の色に順位があった時代、特権的な色としての希少価値を失うほどこの青色は一般に普及しており、誰もが好むこの色に与えられた順位は低かったようです。
緑や藤色の細い縞柄の中に見られるグラデーションも、溜息が出るほど複雑な表情を見せています。これほど色出しに精通したトルクメンの織り手は、そういません。
草原から草原への移動中の目の前に広がる光景、強い光、夕焼けの空、漆黒の空に浮かぶ星、自然のすべてが織り手の創造力を鍛え、磨いた結果です。
コンヤ地域を移動したトルクメン族は、幾何学の柄はもたず、細く強い縫い糸のようなコットンを縦糸に、同じほど細く丈夫に撚ったウールの横糸を使い、縞柄もしくは単色のキリムを織り継いできました。柄を持たない多くの織り手達が目指したのが、どこまでも薄く、細かい織りのキリムを織る事でした。キリムの多くは、天然の茶や濃茶をベースにした縞柄、もしくは赤色に染めた糸で織られたシンプルな表情です。
そんな中、この織り手は縞柄の中に、自身の感情を色を通して織り込んでいます。
部族の伝統を守りながらも、常に技量の向上と一層の美しさをめざした織り手のひたむきさが、私たちに教えてくれるものは大きいと感じさせられます。