KJ19791、238x168cm、ベッサラビア(Besarabya)、オールドキリム

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キリムNo.: KJ19791

産地: ベッサラビア(Besarabya)、オールドキリム

寸法: 238x168cm


1484年、トルコ人侵入によりモルダビア南部はオスマン帝国の支配下となり、この地をベッサラビアと呼ぶようになりました。その後、露土戦争(ロシアとオスマン帝国の戦争)にトルコが負けた結果、ベッサラビアはロシアに割譲されました。15世紀から20世紀にかけ、モルダビア、オスマン帝国、ロシア帝国、ルーマニア、ソビエト連邦と支配されたベッサラビアは、現在ではモルドバ共和国とルーマニアの領土となっています。

この様な歴史的背景の中、ベッサラビアの織り手が織り継いできたのがベッサラビアン・キリムです。様々な文化の影響が、写実的で繊細な表現、独特の華やかな色調、表情ある織り方などの特徴を持ったキリムを生み出してきました。
東欧の華やかな花柄がモチーフのキリムは、大小様々な花に動きや流れを出しながら、表情豊かな表現をするために、横糸を一針一針斜めに入れていく運針(うんしん)技法です。
ウールより強い綿を糸のように細く固く撚った縦糸は、ロシア、カラバ地方のキリム同様、目を見張るように細かい織物作りの伝統を踏襲しています。
どこのキリムでも見た事のない紅色と桃色の赤色は、遊牧民とは対極にある文化の華やかな香りと豊かさが伝わってきます。
織り上がったキリムからは、織り手の力量はもとより、豊潤なベッサラビアの華やかな文化も伝わってきます。

トルコ人がこの地を占領した時、彼らは目の前のベッサラビアキリムの華やかな美しさや独特な色調と技法に、瞬間に魅了されたのでしょう。偶像崇拝を禁じるスンニー派が大勢を占めるトルコです。形あるものはすべて幾何学文様で表現されなくてはならない教えの中、「良いものは良い」、「良いものは受け入れる」という寛容な気持ち、あるいは確かな審美眼で、他民族の文化を受け入れた彼らです。その後、この地のキリムは、トルコキリムの特別枠として、「ベッサラビアン・デザイン」と命名され、現代に受け継がれてきました。

東欧、ヨーロッパ、ロシアなどの影響を受けたキリムは、遊牧民との違いを一目瞭然に語っています。織り手の豊かな感性は、どこまでも華やかに、どこまでも美しくをキリムに織り込みながら、さりげなくその力量を示しています。
思わす目が止まる上下のフリンジは、織り手がデザイン以上、染色以上に気合いを込めた、キリムの仕上がりを決定付ける作業でした。誰もが一番初めに気づく見事な凄さです。
当方では、毎年、新年をお祝いするキリムです。





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