KJ12179、203x157cm、東トルコ、ハッカリ、アンティークキリム

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キリムNo.: KJ12179

産地: 東トルコ、ハッカリ、アンティークキリム

寸法: 203x157cm


1994年に出合ったハッカリキリムの深紅は、まるでコチニールで染めたかのように独特の赤色が店内のどのキリムよりも印象的で、圧倒的な存在を見せていました。
「この深紅、シャルキョイの古いキリムに時々みかけるけれど、ハッカリでは何を使っているの?」の問いに、「コチニールに見えるね?」と問屋さんは答えました。

コチニールは19世紀、北アフリカ、カナリア諸島で盛んに生産された動物性染料です。
植物性染料とは一味違った発色は、誰もが羨望のまなざしを向けるほど刺激的で魅力的でした。しかし、2x1.2m位のキリムを染めるのに、サボテンに寄生する20万匹のカイガラ虫が必要とされ、とうてい誰もが使える染料とは言えませんでした。コチニールを使ったキリムは、官僚や金持ちの邸宅を飾る豊かさを象徴する織物として、東欧系の古いキリムに見られます。

東トルコ、ハッカリの実力者がコチニール染料を手にしたとしても不思議はありません。
交易品を持ってやってきた外国人経由?もしくは元気なハッカリの若者が、旅の途中でキリムと交換したのか?部族長が婚礼用のキリムの為に手に入れたのか?想像力をフル回転させなくてはなりません。

実力者の娘の嫁入りキリムには、数々のエネルギーが集約されています。
財力に任せてか、ハッカリキリムには珍しいコットンがアクセントに使われています。実力者の娘のキリムに時に見られる金糸や銀糸が、これでもか、これでもかと言うように、キリム全体にちりばめられています。おまけに、化学染料で染められた紫色まで、さりげなく使われているのです。娘かわいさか、あるいは財力や力の誇示か、とてつもない気合いが伝わってくるキリムです。
織り手は身に付けたすべての知恵と知識を使い、糸を作り色糸を染めました。見事な技術で、金糸もコットンもウールも生かした傑作を織り上げました。

時間の経過が、白いコットンを一層白くしています。無駄毛がなくなった糸は深みを増し、金糸は部分的に磨滅し全体を落ち着かせています。100年以上前の嫁入り時、金ぴかに輝いていたキリムは、相変わらず、見る人の溜息を誘っています。




眼=邪視除け、 ベレケット=豊穣、 狼の口=邪視除け、 花、種=子孫繁栄、
羊の角=豊穣、たくましさ、 チェスト(箱)=子孫繁栄、 鳥=幸せの予感


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