KJ5625、186x128cm、イラン、セネ、アンティークキリム

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キリムNo.: KJ5625

産地: イラン、セネ、アンティークキリム

寸法: 186x128cm


中心にはボテ模様と呼ばれる花柄、それを囲む白いメダリオンの中には、鳥、チェスト(箱)、眼、花などが見えます。小花や小柄の図案をヘラティ模様といいます。見る者の想像力がためされそうな柄が数々織り込まれている、セネのアンティークキリムです。

1991年春、信じがたいほどの柄付けのセネキリムを入手した私たちは、次の出合いを探していました。伝統的キリムの精緻さは素晴らしいのですが、我々にはその細かさが時に辛さにつながり、中々、次への決心がつきませんでした。

イランセネは、16~18世紀にイランを支配したサファヴィー朝の影響下、サファヴィー朝様式と呼ばれる細かい花柄や刺繍を商品や作品として工房で織る職人達に支えられてきたキリムです。卓越した腕の持ち主たちは、技巧をこらしたどこまでも緻密なキリム作りに魂を燃やしました。彼らのキリムはその精緻さが高い評価を受けてきましたが、自由で奔放で想像力と創造性一杯の遊牧民のキリムとはだいぶ異なっていました。

上等のウールが使われたアンティークキリムの縦糸は珍しくウールです。当時、工房で織られたキリムの多くの縦糸は、ウールより丈夫な綿糸が使われています。丈夫な綿の糸は、どこまでも細く撚れるお陰で、職人のより精緻なキリム作りに最適な糸でした。

あえてウールを縦糸に使ったキリムは、今までに目にしたどのセネよりも柔らかい優しい雰囲気を醸し出しています。計算された柄置きは、織り手が工房の職人であることを教えています。自家用に織られたキリムは柄を間引いたお陰で、柄と柄の間に緩やかな空間が生まれており、それぞれの柄をじっくり観察する気持ちになります。見れば見るほど雰囲気のある素敵なキリムです。

織り手は、赤色、藍色と白の伝統的なクルド族の色調を使っています。長い時間がすべての色を褪色させ、柔らかい表情を生み出しています。
特にグレーに褪色した藍色には驚かされます。藍色に化学染料の黒色をかけながら染め出した色は、光が100年の間に、こんなに表情ある鼠(ねずみ)色に褪色させました。

赤、藍、白の伝統色のセネキリムが、自然の力と使い継いだ子孫の愛情のお陰で、まるで現代に向かって織ったのかと思わせるほどのミラクルを発している姿に、織り手も驚き感動していることでしょう。




花、種=子孫繁栄、 ベレケット=豊穣、 鳥=幸せの予感、 眼=邪視除け、


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