KJ13634、258x158cm、イラク、アラブ族、オールド刺繍織り

キリム マイギャラリー

キリムNo.: KJ13634

産地: イラク、アラブ族、オールド刺繍織り

寸法: 258x158cm


これを手に入れたのは1995年です。
「ありえない!」と声を上げた織りをするスタッフが指さすウインドー一杯に張られた織物は、まるで太陽のように大きなエネルギーを発散していました。吸い込まれるように店のドアを開けると、目に飛び込んできたのは黄金色、オレンジ、ピンクを始め多色の、見た事もない色の組み合わせの織物です。ビッシリと埋め尽くされた細かい仕事でありながら、幼い子供のように大らかな表現の刺繍の数々に目が慣れてくると、そこに広がっていたのは独特なアートの世界でした。

手に取って見ると、日本の綾織りのように、張られた縦糸に横糸を斜めに入れた地布の上全体を、様々な色糸で埋めている織物です。そして毛布のようにしなやかです。
織る事の大変さを知っているスタッフは、「地布にこれほど手間をかけているのに、その上全体を刺繍してしまうなんて、まさに文化ね。」と、感嘆の言葉を繰り返しました。

笑顔で私たちの興奮状態を見ていた問屋さんは、これはイラクのアラブ族の織物だよと、説明を始めました。
アラブ族はイラクの南部にあった世界最大の湿原地帯で暮らした部族で、独特の文化を伝え継いできた人々です。チグリス・ユーフラテス川が交わるこの地帯は、メソポタミア時代からの風習が残されてきたと言われる地域でした。
1970年代のイラン・イラク戦争から様々な時代を過ごし現在に至る間に、自然も破壊され、人々は生活の場を失ってしまいました。昔から続いた部族の伝統を織り伝える習慣も、当然、壊されてしまったのです。

今では、幻の織物と言われるほど貴重な文化となったアラブ族の織物です。
織り手たちは、身近にある様々なものー花、鳥、星、太陽、樹、水、動物などを、幾何学文様あるいは具象柄で地布の上に刺繍しています。キリムの織り手以上に幅広いデザインのモチーフに、織り手たちは織る事を楽しみながら布の中にストリー性ある織り手の世界を展開していきました。

上等のウール、細かい仕事、布の重さと湿度の高い生活環境から想像しますと、これはテントの壁を彩ったタペストリーや間仕切りに使われていたのでしょう。ハレの日、華やかに彩られたテントを訪ねる客人達は、パラダイスに見守られながら、楽しい時間を過ごした事でしょう。





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