KJ30612、98x55cm、アダナ、アンティークジジム織り(ウール/ウール)

商品, 逸品キリム

キリムNo.: KJ30612

産地: アダナ、アンティークジジム織り(ウール/ウール)

寸法: 98x55cm

SOLD OUT

問屋さんが勿体ぶりながら愛おしそうに広げたのは、目を見張るほど緻密な織りの先祖のアンティークジジムです。細かい仕事の表情豊かな立体感あるキリムは抜群の存在感で、不思議な褪色を見せていました。アダナの伝統が織り込まれた先祖の作品は、きれいで惚れ惚れするほど魅力的でした。

地中海沿岸に近いアダナは、肥沃なチュクロワ平原にある町です。アラブとアナトリア間の交易ルートにあったアダナは、工業と農業、交易品などで栄え、豊かな色調や様々な技法で織られるキリムは、高い評価を得てきました。

じっくり観察していると、広げられたキリムの面白さが益々見えてきました。
細く強く撚られた縦糸も横糸もアダナの伝統の茜色に染められています。細い縦糸に細い横糸を入れて、細かい織りの薄い平織布を、まず織った織り手です。
いったどれほどの時間をかけたのでしょう、織り手は織り上がった赤色の布に、色糸を使い刺繍を刺しながら、キリム全体に柄を付けています。この刺繍が一層の立体感と重厚感をキリムに与えていたのです。
本来のジジム織りは、横に入った横糸の上に、柄を付ける色糸を織り込んでいく技法です。

同じ赤糸を使いながらも、キリムの中心には染められた当時のままの赤色が残り、ボーダー側の赤色は柔らかく褪色しているのです。
「どうしたらこのように褪色するの?このように褪色させる方法があるの?不思議な雰囲気の布ね?」」の質問に、「どうしたのだろうね?光と神様のみ知る、だね。」と問屋さんは真顔で答えたのです。

このキリムの表情は、自然の力と神様の力が織り手に与えたご褒美かもしれません。織り上がった赤布に、丁寧に、一針ごと色糸を刺していく作業は、努力を通り越し、無我の境地に達した人の仕事でしょう。神様と対話しながらの至福の時間が、織り手を無心にさせ、エンドレスと思えるほどの仕事も軽やかに続けられたのでしょう。

織り上がった特上の織物にもう一つ力を貸してくれたのが自然です。空気はウールのツヤを引き立てます。植物が好きな光は、まるで自我があるかのようにボーダーだけを美しく褪色させました。自然の力と人の力がうまくかみ合い、そこに至福の時間が加わると、見たこともない作品が生まれます。



眼=邪視除け、 ドラゴン=豊かさをもたらす、 チェスト(箱)=子孫繁栄


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